PCタウン。
この言葉に聞き覚えがある方は、恐らくかなりの古参プレイヤーであるはずだ。1996年頃にUOが稼動してから、実は数多くのPCタウンが産まれては消えてきた。Asukaも例外では無い。それどころか、このシャードには少なくとも三つの大規模PCタウンが存在していたのだ。
JUNX村、Lag Town、そしてAsukaCity カスミの里。かつての姿は今はもう無い。それぞれが時間と共に駆逐され、現在では面影すら残っていない。しかし、このカスミの里だけはいささか事情が異なる。
AsukaCity カスミの里は、GROWという人物が作り上げたPCタウンである。彼はSonomaシャードにて、BritaniaJapanというギルドのGMだった人物だ。ギルドBJといえば、階級制を持って組織され、入団するには試練を乗り越えなければならず、メンバーにも崇高な行動規範が課せられるといった、当時の人々にとっては「格式高い」存在であった。
そのBJも、UltimaOnlineに日本シャードが導入されると同時に解散され、Grow氏と仲間の数人はAsukaシャードに移り住んだ。その後、氏はAsukaシャードに存在する各ギルドに呼びかけ、Asukaギルド連合"United Asuka"を立ち上げる。
UnitedAsukaのプロジェクトの一つに、「ギルド同士で協力してPCタウンを作ろう」という物があった。戦いに明け暮れる戦士の休息の場として、ブリタニアを駆け巡る商人達の情報交換の場として機能するPCタウン。KASUMIの里は、そんな理念を持って生み出された。
現存する旧かすみ亭 改装済みだが雰囲気がある。 |
かすみ亭キッチン |
そんな里の中心にあったのが、町の酒場"かすみ亭"である。市長はMonsterという人物を雇い、彼に店を任せた。当時のかすみ亭は毎日営業であり、Monster氏の人気もあって、連日連夜酒盛りが繰り広げられていた。
賑やかな場所に、人はひきつけられるものである。その中には赤い名前を持つ者もいた。かすみの里設立当時は、まだトラメルは存在していなかった。また、トラメルが誕生してからも、里の活動はフェルッカが主であり、Tにはイベントなどの用途の為にタワーが一軒だけ建っていたのだ。
赤ネームにとって、そこはいい狩場に見えた。なにせ頼んでもいないのにガード圏外にカモが集まってくれるのだ。必然的に、赤と青の戦いは起こる。かすみの里側は自警団を組織し、迫り来る赤い目をした人々と、時に武力で、時に話術で渡り合ってきた。
中にはこんな本も |
赤にも青にも魅力的な場所であるこの里は、先に述べたとおりGMにとっても魅力的な場所だ。UltimaOnlineが目指す方向性は、今は無き王が述べたように「全てのプレイヤーがエンターテイナーである事」だった。エンターテイナーの集まりのようなかすみの里に、運営側はGMロールプレイサポートを行うことを決定した。
GMの補助を受けたかすみの里は、結婚式の会場をはじめ、様々なイベントを開催していた。他にもJUNX村、LagTown、BGM、PAF等の超有名ギルドやPCタウンが共同でお祭りを開いたり、スタンプラリーなどのイベントも活発に行われた。
全ての中心にいたGrow氏は、まさにカリスマ的存在であり、多くの優秀な人材が彼の元に集っていた。だが市長という肩書きを持つGrow氏は、里の方針やイベント企画などには殆ど口を出さなかったという。むしろ、彼の周りにある市民や同胞達に議論させ、彼らの意思と意見を纏めてGOサインを出す立場である事を好んだようだ。
だからこそ、円滑に数々のGMイベントなどが開催できたのかも知れない。船頭多くして船山に登るとはよく言ったものだ。Growという優秀な船頭は、その航海術と同じくらいに、意見を纏める事を得意としている。動き出した船は、必ず成功の航路を行く。
この頃は、カスミの里の黄金期といってもいい。誰もがこの繁栄は永久に続くと信じていた。しかし、時間はいつも残酷なのだ。
旧かすみ亭の隣にはこんな建物もある。 |
一体何が起って、カスミの里が消えたのか。古参のプレイヤーは経験しただろう時代の流れが、全てを押し潰したのだとしかいえない。トラメルの導入は多くのプレイヤーには福音に聞こえた。ヘイブンの誕生は、全てのニュービーに安息の地をもたらした。
だが、それに馴染めなかった者はどこに行けばいいのか。多くは答えを出さずにブリタニアから出て行った。
つまりは、そういうことである。
そしてついに、正式にPCタウンとしての活動を休止するという宣言がなされるに至ったのである。
周囲には、殆ど何も残っていない。 |
つづく...
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