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子猫酒楼Blog http://koneko-shurou.jugem.jp/
マラス大陸のとある場所に、猫の鳴き声が木霊する一角がある。音を頼りにたどって行けば、白を基調とした背の高い建物にたどり着くだろう。人を招くように片手を挙げている猫の置物の傍には、古びた木製の看板が置かれている。Katze Libraryと呼ばれるそこは、奇妙な蔵書と奇妙な常連達を抱える図書館だ。
緯度と経度をほんの少し飛び越えれば、そこには非日常を日常として暮す人々がいる。旅というのは、そうした不思議に触れることだと、昔の偉い人は言ったのだ。昔日の学者は、文化・風土・思想・宗教・伝統の違いとして捉え、それを一つの学問体系にまでのし上げてしまったが、我々一般人からすれば小難しい事はどうでもいい。そんな事よりも不思議に触れてに楽しもうと、頭ではなく二本の足を使って歩き出すのだ。見知らぬ道を進んでいけば、一つの真理にたどり着く。歩かない学者よりも、歩く旅行者の方が実感しやすいその答えは、実に単純明快である。不思議を作り出しているのは、文化や風土や思想や宗教や伝統なんかじゃあなく、そこに暮す人々なのだ。
そんな具合に我々のすむ世界には、至る所に不思議があって、自分達と違う人がひしめき合って出来ている。実はそれら"違い"が生まれるのに、距離はあまり関係ない。勿論距離が伸びれば伸びるほど、"違い"は浮き彫りになってくるのだが、その前にもっと明確ではあるが、どうも存在感のない何かがある。人がそれぞれ持っている、私とは違う何かの事を、時間や歴史という言葉を当てはめるのが一番しっくり来るかもしれない。
同じ事が、このUltimaOnlineでも言えるのだ。はたから見れば「たかがゲームにまじになっちゃってどうするの」状態である事は、重々自覚して話を進めよう。
これまで紹介して来た酒場は、全てAsukaシャードのものである。最古の日本シャードであるがゆえに、和鯖導入時は最も多くのプレイヤーを誇っていた。やがてついたあだ名が"商人の飛鳥"。その名の通り、プレイヤー間取引が非常に盛んに行われており、取引用のホームページが最も早く登場したのも、このAsukaシャードだったと思う。
私自身、外国シャードからの移住組みで、色々彷徨った挙句Asukaに腰を落ち着かせ、一度はここに骨を埋めた身だ。復帰するにあたりなんだかんだでここを選んだのも、それなりの愛着があったからだろう。墓を掘り起こして昔のアカウントを再開させてはいないが、現状不満は特に無いと言える位には、楽しい復帰ライフを送っている。
だがまあ、長い事同じ場所にいれば人間飽きが来る物だ。倦怠感には及ばない物の、それに似たような感情を抱いた事は一度ならずある。そうした時に脳裏によぎったのは、以前取材した赤メア亭のYAMA氏の事。「シャードトラベラー」というプレイスタイルに魅力を感じた私は、早速ログイン画面のシャード一覧を眺める作業に移ったのだった。
商人の飛鳥のように、他の日本シャードにも通り名が存在していたように思う。最も有名なのはHokutoシャードだろうか。Hokotuと誤表記された上、全裸にバシネットに棍棒を片手に"Yes?"とのたまう独自の文化から(あくまでネタとしてではあるが)変態シャードと呼ばれていた気がする。
ギルドウォーならYamato、PvPならWakoku、RPがしたいならIzumoといった様に、知らない間にシャード毎に特徴がうまれ、それに惹かれたプレイヤー達が移住して――。そうして、各シャードは異なる歴史を持つようになった。それらの幾つかは耳にしたことがあったのだが、どういうわけか、Mizuhoシャードの噂だけはあまり聞いた覚えが無い。そこは私にとって、地味で印象の薄いシャードだったのだ。
折りよくYAMA氏から金曜日営業のMizuhoの酒場を紹介してもらっていたので、初めてのシャードトラベル先と相成った。さっそくキャラクターを作成して、降り立った先はヘイブン銀行前。そこで早くも不思議と出会うのであった。
ASKヘイブン前では、銀行の周囲に毎日人だかりが出来ている。殆どの人が何をするわけでもなく、ログインすれば銀行前で時間を潰す。それがいいのか悪いのかは置いといて、私の中のヘイブン銀行前はそのイメージがこびり付いていた。銀行北側・南側には、毎回同じ顔ぶれのプレイヤーが律儀に整列して談笑し、銀行前広場では時たま行商人が現れる。出先で斃れ、ペットの蘇生の為に銀行前にやってくれば、物凄い勢いでテイマーの方々が我先にと飛んでくるのが復帰後の日常風景だった。
Asukaヘイブン前 |
第一村人が、各訓練所を案内する黄色ネームではあまりに味気ない。ムーンゲートまで走り出し、とりあえずトラメルの各街へと飛んでみたが、状況はどこも同じだった。Asukaでさえ、人が溜まる場所は限られる。ヘイブンが駄目ならブリ銀前も駄目。結局Asukaではいつも携帯しているベッドロールと幾ばくかの薪、そしてランタンの油を買いに、とぼとぼとヘイブンまで戻る事になった。
物資を購入し、さあ歩くかと決意し直したところで、偶然広場にROしてきたプレイヤーに出会う。安堵と喜びの余り、彼の名前は覚えていない。半ば興奮気味に事情を伝えると、そのプレイヤーはこう言った。「これがここじゃあ普通っすよ」と。
さっそく文化やら風土やら歴史やらの違いに直面したあと、彼が開いてくれたゲートに礼を言いながら飛び込んだ。正直この時点で、MZHシャードに対する印象はお世辞にも良くは無かった。人が居なくてはコミュニティもなにもあったものじゃない。流れない水は淀むのだ。
Katze Library 正面 |
子猫酒楼は2009年に開店した酒場だ。本来はKatze Libraryの名の通り、図書館がメインであり、子猫酒楼はそこに併設されたカフェバーのような物だったが、最近では本よりも店の雰囲気を味わう為に来る客の方が多いそうである。
店主 Katze氏 |
その中で孤独民として生きる事は、辛いものだ。彼女が何故そうなってしまったのか、詳しくは聞けなかった。少なくとも、今は気の合う仲間がいる事だけは確かである。さて、そんな彼女であるが、ある時銀行前である物を行商する人物に出会う。その時に、UOが抱えるいくつもの楽しみの中の一つに出会った。
UOのシステムが、本をサポートしている事は周知だろう。既存施設にある本棚を覗いて見れば、大体三冊程度の英字の本がすぐに見つかる。それらは全て英文で記されており、ゲーム的には何のメリットもなく、スパイスとして存在しているにすぎない。それらの内容は、偉人の伝記であったり歴史書であったり、はたまた教科書だったりする。錬金術のイロハを記した物もあれば、誰が得するのかわからない様な内容の物まで存在している。
世界設定にさらなる深みを加えるそれらは、一見無意味なあれやこれやなのではあるが、コーヒーが嗜好品として好まれるように、無くてはならない物として異常なまでにのめり込む人がいる。次第に彼らは自分でも何かを書きたいと思うようになる。ちょうどいいことに、雑貨屋では白紙の本が売られており、プレイヤーは自由に言葉を書き連ねることが出来るのだ。
店売りや本棚にある英字のものはNPC本。それに対して、プレイヤーが独自に書き上げた物をPC本と呼ぶようになったのも、彼ら本好きが残した功績である。勿論多くが本職ではないために、PC本の質はピンきりだ。読むに耐えない物から、思わずログイン時間を全てつぎ込み、1ページ毎にスクリーンショットをとって保存したくなる物まである。Katze氏が出会った行商人の売り物は、まさにそうしたPC本だったのだ。
PC本の収集を細々と続けていた彼女に、またしても転機が訪れる。二軒目の家が手に入った頃に、偶々家の腐りに出くわした。腐りを待っていたプレイヤーは、家主が蓄えた財産を吟味する。そんな中彼女は、誰からも目を向けられず、放置されているセキュアの封を開けた。中に詰まっていたのは大量のPC本。中には見知らぬ人の日記などもあった。
子猫酒楼店員s |
より広いスペースを求め、マラスにある18*18の三階建て屋上つきの物件に引っ越した。その際にただ図書館だけではと、二階にカフェバーである子猫酒楼閣を併設する運びになったのだ。名前の由来は言うまでもない。余談ではあるが、本好きの多くが猫好きなのはどうしてなのだろう。
ともあれ、転居した頃にはもう彼女は孤独民ではなかった。店番かつ店舗内装担当のNine氏。ドラゴンを包丁で捌きあげる地獄のコック長Claudia氏。そしてようせいさんMya氏。他にも様々な顔ぶれの常連客が、毎週この店にやって来る。
気づけば、ヘイブン前で感じた虚無感などは消え去っていた。それどころか、もっとこの場所にいたいとさえ思うようにまでなっていたのだ。その思いは、図書館の蔵書に触れてさらに加速する。
店長のKatze氏他の話によれば、MizuhoはUO本文化に恵まれているらしい。自宅を図書館にするというコンセプトは、このシャードでは割とメジャーな考え方なようで、Katze Library以外にも沢山の図書館が存在しているそうだ。この店にある蔵書は、全て店長が目を通したお墨付きの物ばかりで、なるほど読んで見ればどれもこれも面白い。中には現実にある雑誌のパロディや、十八歳未満のお子様は読んじゃいやんな物まである。思わず「飛鳥じゃこうはいかないなあ」と考えてしまうほどだ。
図書スペース |
結局「そういうものだ」で納得するのが、一番精神衛生上健全なのである。もしかしたらそういう思考回路が原因なのかも知れないが、まぁそれは余談だ。なんにせよ、Katze Libraryが抱える蔵書はどれも魅力的で、私のMizuhoシャードへの印象を百八十度変えさせるに十分だったのである。
UO本文化を象徴するように、子猫酒楼では定期的にPC本の即売会を実施している。普段は利用されていない屋上のスペースはその為に作られているようで、イベント当日になれば多くの作家達で賑わうのだそうだ。無論、同様のイベントはこの店以外でも行われているらしい。また、店舗三階部分には、内装担当自慢の「エロ座敷」が作られている。なにがどうエロいのかは、まあ見ていただければわかるかもしれない。
エロ座敷 |
「ふりーだむ&かおす」
なんとなく納得してしまったので、こっそりとMZHシャードに新たにキャラクターを作成してしまった自分がいる。出来ることなら旅行者としてではなく、空気を共有するだけでなく、このシャードで繰り広げられる自由と混沌に参加してみたいと心から願ったのだった。
営業時間が過ぎ、店員や客達が帰っていった後。こっそりと図書館の扉を開けてみよう。もしかしたらエロ本コーナーで立ち読みしている誰かにあえるかもしれないから。
Katze Library + 子猫酒楼
Mizuhoシャード マラス北部
猫の鳴き声が煩い場所
毎週金曜日22:00-24:00
[EOF]
Mizuhoはシャードができたばかりの頃に少し滞在してましたな。もっともその頃は俺もぼっちだったんで覚えている事はあまりないですが。
返信削除瑞穂の異名は…そういやあんまり聞かないかも。
あくまでもAsukaの知り合いに限った話ですが、本を書く人というのはどうにもこうにも変人が多い気がします。
灯台に住む放浪者やら、口の悪いエロ本書きやら…後者は引退してしまったようですが。
これは宣伝になっちゃいますが、ふりーだむ&かおすならポン酢亭も負けちゃいませんぜ旦那。その場のノリだけで、客も店員も巻き込んでみんなでサベージ化なんてやる酒場他にない!…と思う。
最近シャードを越えて酒場巡りをしているので、子猫酒楼もいつかお邪魔したいと思ってます。金曜でなければなあ…
>>Ponさん
返信削除やっ!大変おまたせしました!
うおみん紹介文で事実に気がつくっていうね!
MZHは何故か私も印象に残らないシャードでした。
それよりもIZMやYMTの方が心を惹かれていたのですが
やはり行ってみないと、本当のことは見えてこないものです。
ASKでも本に関しては割と活発だと思いますね。
YomYomさんやHappyPlace^^さんなど、ギルドとして活動している方もいらっしゃるようです。
物書きに変人が多いのは、きっと仕様だと思います。
芸術家気質な人ほど世間とは住む線が違うようですし
よりによってUOでやるなど、正気の沙汰とは思えません。
だがそこがいいのだ。狂気の沙汰ほど、面白い!
ポン酢のカオスっぷりは、お店拡張した方がいいレベル。
ですが、ポン酢亭の造りは個人的に気に入ってますので
あの空間に混沌を凝縮していて欲しいとも思いますよ!w
余談ですが、酒場の店主という立場にいる人が、他の酒場に行ったときに見せる
ちょっとした気恥ずかしげな態度が興奮します。
なんだこの性癖暴露。
まぁ、最近ログイン率が減ってますが、近いうちにまた活発になりますので
その際はよろしくおねがいします。